歯周病治療

PERIODONTAL

歯を失う原因第1位の
歯周病

歯周病は、歯垢(プラーク)に潜む歯周病菌が原因で発症する、歯の周囲の組織の炎症性疾患です。放置すると、歯を支える歯槽骨が徐々に溶かされ、最終的には歯を失う原因となる可能性があります。実際、歯を失う原因として最も多いのが歯周病です。初期の歯周病では、自覚症状がほとんどないのが特徴です。重症化すると治療も困難になるため、自覚症状がない段階でも定期的な歯科検診を受けることが大切です。

歯周病と
全身の関係について

歯周病は、全身の健康にも大きな影響を及ぼす可能性があります。歯周病菌は、歯肉の毛細血管などから体内に侵入し、強い毒素を放出しながら全身を巡ります。その結果、動脈硬化に伴う心筋梗塞などの心臓病や、糖尿病の悪化との関連性が指摘されています。

糖尿病
糖尿病の患者様は、血糖値が高い状態が続くことで血管がもろくなりやすくなります。そのため、お口のケアが不十分だと歯肉に炎症が起こりやすくなり、放置すると歯周病の重症化リスクが高まります。
心臓病
歯周病菌が原因で血管内に血栓が作られ、それが心臓の血管に詰まると心臓病を引き起こします。動脈硬化や大動脈瘤の患部の血管を検査すると、歯周病に関連する細菌が多く検出されています。
早産
歯周病を持つ妊婦の早産になるリスクは歯周病でない人の約7倍と言われています。また、妊婦の血液中の歯周病菌は胎盤に付着し、細菌感染を引き起こします。その結果、おなかの赤ちゃんが出産時の胎盤を通して歯周病菌に感染するリスクもあります。
肺炎
お口の中に歯周病菌が多い場合、飲食物が誤って肺に入った際に、歯周病菌も一緒に侵入し、重篤な肺炎を引き起こすリスクが高まります。また、高齢者ほど体の免疫力も低下しているため、感染しやすくなります。

歯周病の進行

  1. Flow01

    軽度

    歯肉に軽度の炎症が生じ、歯磨き時に歯肉から出血することがあります。歯と歯肉の間には歯周ポケットが形成され、歯垢や歯石が付着しやすくなります。

  2. Flow02

    中等度

    歯周病菌により歯槽骨が溶かされ始めています。歯周ポケットも深くなり、汚れが溜まりやすい状態です。口臭が気になったり、歯がグラつく感覚を覚えたりすることが増えてきます。

  3. Flow03

    重度

    歯槽骨の半分以上が破壊され、歯を支えることが難しくなっています。歯を指で押すとグラつきがはっきりとわかり、歯肉から膿が出ることもあります。歯が抜け落ちるリスクが高いため、迅速な歯科治療が必要です。

歯周病の治療方法

歯周基本治療

  • 歯周病検査

    歯周病検査では、専用のプローブという器具を使用して、歯と歯肉の間の歯周ポケットの深さを調べます。
    同時に検査時の出血の有無も確認し、歯周病の進行度や炎症の有無も確認します。
    また、歯の動揺度検査では、調べたい歯にピンセットで力をかけた際の歯の動き方により歯周病の進行度を調べます。

  • プラークコントロール

    プラークコントロールとは、歯周病の原因となる細菌を可能な限り除去することで口腔環境を整える、歯周病のもっとも基本的な治療法です。
    口腔内の歯石や歯垢を落とし、それでも取り除けない範囲に歯石が付着している場合は歯周ポケット内の歯石取りも行います。同時に、正しいブラッシング方法についての説明も行います。

  • 歯石除去

    手用の器具を使用して歯周ポケット内部の歯の表面に付着した歯垢・歯石をとり、歯の表面を滑沢に保ちます。
    当院では、痛みを避ける・飛沫が飛ぶのを防ぐために、一般的に使用される超音波スケーラーは使わずに手用で時間をかけて行うことが特徴です。

歯周外科治療

歯周外科治療とは、歯周病が進行し歯周基本治療のみでは歯肉の状態が改善しない場合に行われる外科処置のことをいいます。
歯周外科処置を行う目的としては以下のようなものがあります。

  • 深い歯周ポケットを減らす
  • 歯周基本治療では取り除けない歯石やプラークを除去する
  • ブラッシング等の口腔ケアを容易にする
  • 失われた歯周組織の再生を図る

以下に進行してしまった歯周病を改善させるための歯周外科治療と、改善した歯周組織を維持しやすくするための歯周外科治療の方法について解説していきます。

フラップ手術

フラップ手術とは、歯周ポケットが深く、器具が到達せず、歯石等の炎症の原因となる物質を完全に取りきれない場合に、麻酔をして歯肉を切開し、病巣がよく見える状態で汚れを取り除く手術法のことをいいます。ただ部位によっては、術後に歯肉が下がってご自身の歯が長く見えたり、冷たいものにしみやすくなったりする可能性があります。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法とは歯周病によって失われた歯周組織(歯槽骨や歯根膜など)を再生させる治療法です。
現在、当院では主に厚生労働省の認可を受けた歯周組織再生材リグロス®を主に使い、また症例によっては骨移植を併用して歯周組織再生療法を行っております。

リグロス®
歯が生える時の環境を再現し、歯周組織の再生を促します。具体的には、治療部位を切開し、プラークや歯石を除去した後、リグロス(細胞を活性化する成長因子)を歯根の表面に塗布し、縫合します。これにより、歯の周りの組織が活性化し、ゆっくりと再生していきます。リグロスは歯周組織の成長を助ける因子で、歯周組織の再生をサポートする役割を果たします。
骨移植
ご自身のお口の中から採取した骨や、化学的に合成された人工骨を、失われた欠損部に移植し、歯周組織を再生させる方法です。

歯周形成外科

歯周形成外科とは、歯肉の形や量を調整して、歯肉の見た目や、歯の磨きやすさなどを改善させる手術のことです。
患者様の日々のセルフケアがしやすい口腔環境を獲得するために、下がった歯肉を再生したり、薄い歯肉を厚くしたり、小帯(頬や唇と歯肉をつなぐヒダ)を切ったり、固い歯肉を移植したりします。
審美面だけでなく清掃性を改善させることで、むし歯や歯周病を予防していきます。

※重度に進行してしまった歯周病では歯周外科治療ができない、またはできても十分な効果が得られない場合もあります。

安定期治療

歯周病安定期治療は、歯周病治療が一段落した患者様のお口の中の安定した状態を維持するために、定期的に行う予防プログラムです。安定期治療として受けられる内容は以下の通りです。

  • 歯肉より上に付着した歯石の除去
  • 歯周ポケットの奥深くにある歯垢や歯石の除去
  • 歯の表面のクリーニング(PMTC)
  • 患者様自身でプラークコントロールができるようになるための口腔衛生指導
  • 必要に応じた噛み合わせの調整

歯周病になる前から
予防を行うことが大切です

定期検診とはメインテナンスとも呼ばれ、むし歯や歯周病を再発または進行させないため、歯や歯周組織の状態を健康に維持するためのものです。
お口の中に症状が出てから歯医者さんに来院する方もいらっしゃいますが、症状が現れる頃には歯周病が進行してしまっている場合もあるため、具体的な症状が現れる前に、定期的な検診をすることが大切になります。それが早期発見につながります。
定期検診(メインテナンス)では、歯石やプラークを取り除くだけではなく、お口の中の状態が悪くなっていないか、悪くなる兆候がないかを問診や検査で確認していきます。また、歯科衛生士によるプロフェッショナルケアとご自身でするホームケアのアドバイスを行います。